TJのウオーキング

あれこれ


ウオーキングに関連して思うことをまとめてみました。

表は高校生と元気な中高年、そして競歩選手の普通歩行と早歩きについての速度とピッチ(足の回転数)、歩幅を比較したものです。中高年の方々でもウオーキング技術を意識しながら歩くことで、高校生と同じようなピッチと歩幅で歩くことが出来ることがわかります。通常の歩行動作の中に、オリジナルな腕振り動作や、身体全体を使った動作を行うことで、美しい姿勢と大きな歩幅を自然に生み出すことができます。

競歩選手の歩幅の広さに注目してください。 究極の歩行スピードを追求する競歩選手たちは、一般の人々が真似できないような広い歩幅で歩くことができます。そのために、体幹、肩、骨盤を中心にした歩幅を伸ばすための特別な練習を毎日行っています。ここで紹介する動作レッスンは競歩練習と陸上競技で行われる動きづくりをベースに考えられました。


Whyを知ったあとは
Howを学ぼう

近年、ウオーキングに関する健康情報は大幅に増え、運動としての価値や健康効果(Why)は広く知られるようになりました。とはいえ、速歩の速度基準や、インターバル速歩の時間配分などは個人の体力差が大きく、かかとからの着地で歩幅を広げるとブレーキが大きくなるなど、実際に行ってみると矛盾を感じることもあります。そこで、どのようにして速く歩くフォームを身につけるかとか、どうやって歩幅を伸ばすのか等の方法(How)に焦点を当て、体育の授業のような形で解説しながら、ウオーキング指導テキストを構成してみたのがこのE-10ウオーキングレッスンです。


散歩は頭と心の健康
速歩は体力アップ

アルキメデスは弟子を引き連れて歩きながら哲学を語り、逍遥学派と呼ばれています。日本でも京都には文人たちが思索をめぐらした哲学の道があり、近年、 心地よく歩くことで脳が活性化させることは科学的にも証明されてきているようです。一方、 運動効果をより期待するのであれば脈拍の上昇をねらって、上り坂を歩いたり、速度を上げる必要があります。ウオーキングも目的に合わせた運動メニューを考えることが大切でしょう。


1日1万歩について

考えてみると

普通に歩いた時のピッチは毎秒約1.8回、速歩きで約2.2回位なので、1万歩歩くには普通に歩いて1時間30分以上。速歩きでも1時間20分位かかることになります。仕事を持つ人や若者にとって、歩くだけの健康運動にこれほど時間をかけることは難しいでしょう。もちろん、続けて歩かなくてもよいのですが、これだけの時間をかけて歩く動作だけするのはもったいないと感じます。1日の健康運動時間として、40分位で生活の中の様々な動作の質を向上させる運動メニューを提案することを目標にしています。 


ウオーキングも
量から質の時代へ!

食習慣に置き換えて考えてみると、昔は成長するために必要なものをたくさん食べていた「栄養素と量」の時代でした。生活水準が上がるにつれ、最近では健康に役立っておいしいものを選んで食べる「栄養バランスと質」の時代に変化してきました。ウオーキングもこれからは、歩数、距離、時間の「量」の指標が中心の時代から、速度、歩幅、ピッチ、脈拍、姿勢、フォーム等を指標とする「質」の向上を楽しむ時代に向かっていると思います。

一歩一歩が

バランス運動

 四足歩行であれば3足着地の安定した局面が作れますが、二足歩行では一歩一歩が微妙なバランス運動です。そのため、片足だけで立つ局面をコンピューター制御し続けなければならない二足歩行ロボットを作ることは非常に難しいと言われています。片足の重さは体重の約17%位であり、片足を上げればその分反対方向に重心が移行し、着地側の足に負担がかかります。体幹と両腕で常にバランスを取りながらの二足歩行は脚だけでなく腕を含めた四肢の連動なのです。


生活様式の違いと

椅子

日本人は古くから畳の生活に馴染んできましたが、西洋では椅子と机、寝る時はベッドの生活の歴史です。トイレも西洋は椅子型でアジアはしゃがむスタイルの歴史が長いです。古くから言われる王様の座る「王座」。仕事で成功した人は大きなデスクと立派な椅子にあこがれるものです。西洋のカフェでは、立って飲む人と椅子に座る人とでは値段が違うこともあります。椅子については、座面の高さと骨盤を支える背もたれの角度が重要で、日本のJIS規格は座面の高さやいすの高さの範囲を定めています。近年、人間工学的に考慮された椅子も増えてきましたが、座り方の様式の違いや椅子のデザインと構造には、日本と西洋の歴史と文化の違いを感じます。


座り方の違いは

姿勢に影響する

畳の生活で正座をすると骨盤は前傾しますが、胡坐をかくと骨盤が後傾します。姿勢よく椅子に座ると、骨盤は前傾し背筋が発達するでしょう。欧米人に比べると、日本人は猫背の人が多いように思えますが、畳の上で胡坐をかいて座る生活習慣が原因かもしれません。自分の体格に合ったサイズの椅子と机を利用することがよい姿勢に結び付くと思いますが、学校では大きな生徒に合わせる大は小を兼ねる形で、小さな子にとっては高すぎる椅子でつま先だけ着いて座っている光景もよく見られます。ふかふかのソファーはリラックスできますが、長く座りすぎると猫背に結び付くので、時々立ち上がって背筋を伸ばしたり、スクワット運動をするとよいでしょう。生活様式の違いは姿勢に影響すると同時に、下半身の筋肉群と背筋の発達に影響を及ぼしていると感じます。

身体の後ろ側の

筋肉の発達

海外を歩いていると、日本人よりも明らかにお尻が出ている人が多いことを発見します。骨盤が前傾して大臀筋が大きく、背筋が太く発達している人々です。この背景には人種的な違いも大きいと思いますが、椅子の生活では骨盤の前傾につながって大臀筋とハムストリングスの発達を生みだし,畳の生活で胡坐をかく習慣からは骨盤の後傾、その姿勢から立ちあがることが多いと大腿四頭筋が発達につながるのではないかと思えます。私の体験では、一緒に仕事をしていて欧米の人の方が長い時間立っていても疲れていないことがよくありました。彼らは日本人よりも背筋と身体後面が発達していると感じます。歩き方においても骨盤のひねりを使って歩幅を伸ばす欧米人は腕をよく振りながら骨盤のひねりを生み出すように見えます。日本人との歩幅の違いは、体格の差だけではなく、脚の付け根がみぞおちの位置に思えるような、欧米人の骨盤のひねり動作から来ているのではないかと思えます。

西洋と東洋の履物

歴史の違い

 歩くということの歴史の中で、履物の役割は大きいものです。はだしで歩いていた人類の祖先は、二足歩行をしながら進化する中で、生活に重要な足を保護するために履物を考えだしました。植物や動物の皮を使った草履や袋のようなものから始まり、古代エジプトではかかとに紐がついたサンダル、そして足の形にあった靴に発達してゆきました。日本では草履と下駄の歴史が長く、戦国時代の武士は中半と呼ばれる足の指が出ていて土をつかめる草履を履いていたようです。これは今で言えばスパイクのようなものかもしれません。スケートが日本で流行り始めたころには、下駄に歯をつけたスケート下駄も普及しました。日本人が靴を履くようになったのは昭和に入ってからで、軍隊で兵隊に支給され軍靴が普及のきっかけとなったとも言われ、まだ100年位しかたっていません。洋服と和服の違いもあり、日本人の歩き方で腰のひねりが少ないのは、和服が緩まないような歩き方ということもあるでしょう。「なんば歩き」といわれる日本人の歩き方も、和服と草履の生活習慣からの伝統のように思えます
かかとにひもがついたサンダルをはいた歩き方と紐がない下駄をはいた歩き方では。歩き方が大きく異なります。椅子と机の生活と畳の生活の違いが、骨盤の前傾後傾や筋肉のつき方に影響を与えたのと同様に、履物の違いは脚の筋肉のつき方や歩くフォームに大きな影響を及ぼしたのではないかと考えられます。


学校体育で教えたい
ウオーキング

近年学校教育の中で日本の少子高齢化について教える機会は増えてきています。特に保健の授業においては、日本の医療費が年間40兆円を超えその半分以上が高齢者医療に使われていると教えていて、今後高齢化がさらに進む中では、高齢者が健康で過ごすことが大きな社会貢献になると生徒たちに伝えています。中高年の健康づくり活動としては、ランニングやゴルフ等様々な活動があげられますが、中でもウオーキングは最も普及しているもので、日本のウオーキング人口は4000万人を超えていると言われてます。 このように、ウオーキングは生涯続く健康活動として医療費の削減のためにも価値ある運動にもかかわらず、体育の授業の中でウオーキングを教える単元はなく、私自身も体育教師としてウオーキングを指導する機会はありませんでした。そこで、学校の体育の授業でウオーキングを指導する時間があったらどのように教えるかを考え、ウオーキングをスポーツ、健康運動、そして文化的な側面からもとらえたこのE-10ウオーキングテキストを作成することにしました。このテキストが学校体育授業の補足となり、ご覧になったみなさんの健康増進に少しでも役立てられれば嬉しいです。


後記
 このテキストは、健康づくりとして多くの方々が実践しているウオーキングについて、学校教育で不足している部分を補完する目的で私の考えをまとめたものです。私自身は陸上競技の選手時代は走高跳を専門としていて、競歩を実践してきたわけではありませんが、教員になってから陸上競技の指導者として多くの種目を指導する中で、競歩の選手たちにも恵まれ、彼らにアドバイスを送る中で速く歩くことに対して研究を深めることができました。競歩の指導には、短距離や三段跳びなど、ほかの種目の運動経験と指導経験を生かすこともできました。歩くという動作には技術が重要で、競歩の選手たちには、いつもよく考えながら練習する、非常に研究熱心な選手が多いものです。健康効果に役立つという側面で考えると、移動手段が機械化された人類の進化の歴史と生活文化から影響されることも大きいと感じます。世界の街角を旅してみると、中国人の膝から下がよく振り出された歩き方、ヨーロッパの人々の骨盤のひねりがよく効いた歩き方など、世界には様々な体形の人がいて、歩き方も様々であることも発見できます。気晴らしの散歩から哲学を考える逍遥文化、イギリスのフットパスをはじめとする世界各地のウオーキングコース。履物、服装、家具などの身近なものからも、歩くということが生活動作として深い文化活動であることを感じます。
このテキストは、私のこれまでの体験と研究、そして運動用具の発明家としてのアイデアを総合的にまとめたものです。ウオーキングについて「歩けば健康になる」という単純な側面だけでなく、歩くことの意味や価値について知ることで、さらに楽しく歩けるようになるきっかけとなれば幸いです。


TJの研究室

TJのお部屋で体育

コロナ禍の中で、学校の授業も休校になったころ、生徒用に作った動画です。家の中でも運動が行えるよう、英語で体育とジャグリング用具の作り方等を解説しています。また、ハッピーラッキーツボたたきは、北京に滞在したときに体験した「ツボたたき体操」をヒントに作ったものです。明るく笑顔で行ってみると、幸運を呼び込めるかもしれませんよ!

認知症予防には
多様な活動が役立つ

ウオーキングは健康寿命を延ばすために価値ある運動だと思いますが、同時に重要な課題が認知症の予防だと思います。認知症の予防については、常に新しい活動にチャレンジする意欲を維持してゆくことが重要と考え、ジャグリングをはじめ様々な運動を紹介しています。興味のある方は覗いてみてください。

TJ :田邊潤

神奈川県横浜市生まれ
神奈川県立鎌倉高校 
早稲田大学教育学部 卒業 
筑波大学大学院 
体育研究科修士課程修了
早稲田大学本庄高等学院 
保健体育科教諭
 専門競技:陸上競技・走高跳 
最高記録:2m11㎝
研究テーマ
運動用具の発明・健康運動の創造